アンコンに出るときに気をつけたいこと

今年も吹奏楽のアンサンブルコンテンストの地方大会が終わって、様々な団体を聴くことができた。
個人的に気になったことがいくつかある。

  1. 「動いてしまう」VS「振り付けをしていること」による音楽の違い
  2. 現代音楽っぽい楽譜をどう読むか?

    1.「動いてしまう」VS「振りをつけている」による音楽の違い=なんのための振付か?をよく考えて。

    これはとても気になったことの1つ。自分自身もプレイヤーとして、動いてしまう方なので、「動くな」は自己矛盾があるなと思うので、そこまでは言わないのですが、たとえば

    ①曲の盛り上がりに合わせて、配列を変える、前にでて来る、客席を向く

    ②楽譜に書いて指示のある以外の動作

    ③曲の動きが同じ奏者と完全に向き合う

    ④フレージングを合わせるために、楽器をゆらすタイミングを揃える

    ⑤キメのタイミングで全員で上を向く

    これらにどんな意味を持てばいいのか?

    積極性?積極的な音楽を作るときは、音が積極的であればよいのでは?

    表現点が増す?5分をずっと見てくれる審査員がいれば、いいのかもしれないけれど、身体パフォーマンス(振り付け)の大会ではないので、あんまり関係ないんじゃないかと思う

    例えば、立奏時の曲の終わりに、全員が客席を向いて音を出したとしよう。直接ベルが客席を向くので、たしかに審査員席に音が届くのかもしれない。

    ただ、その動きをするためにアンブシュアが崩れたら?足を動かすことに意識が向いてしまって、音に影響が出たら、なおさら意味がない。

    動くこと、振り付けることの問題点は

    ・健康的なサウンドを出すための基本フォームが崩れてしまうことによって、音による表現が損なわれる可能性がある

    ・視覚的な効果が必ずしも、いい点につながるわけでもない(と思う)

    ・振り付けのほうが音楽を超えてしまう、過剰になってしまい、「音」はそうなっていないために説得力をかく。

    →振り付けをすることが、音楽の表現点を上げるわけでは必ずしもない。

    2.現代音楽っぽい楽譜をどう読むか?=楽譜から意味を深く掘り起こす

    アンコンの曲のバリエーションも時代が1つ回ってきたのかなという印象がある。2000年後半の定番レパートリーの復活と、アンコンシーズンごとに出される各出版社の「新曲」ぽいもの、そして委嘱作品・海外のマイナー曲の増加と、団体によってカラーが出てくるようになってきている。

    かなりの割合の曲が、現代音楽っぽい何かである。私は現代音楽がとても好きなので、聴くのが楽しいが、いつも気になることがある。

    ・参考音源の耳コピで譜読みを初めて、そこに「音楽的な味付け」と称して振り付けや、アクセントの強調、楽譜にないaccelerandoなど…工夫が加わる。

    そうすることで起こってくるのが、自分勝手な音楽解釈である。

    ■楽譜から読んでいないから、フレーズの大事なポイントを逃す。

    ■テンポがゆらぐから、曲が持っているビート感が損なわれる

    ■逆に、音楽が平面的になってしまう。何がいいたいかわからなくなってしまう。

    現代音楽っぽい曲こそ、楽譜に書いてある音符をまずはしっかり読むことが大切なのではないか?よほどのことがない限り、何かの「意味」を作曲者は書き込んでくれているはず。速度や、アーティキュレーション、もっと言えば、和声の中に音楽のエネルギーも書き込んでいる。それを無視すると、本来の曲の良さが出ず、曲にならない。というごくごく普通のアプローチがとれないなら、もっと読みやすい曲をやるべきじゃないか?と私は思ってしまう。

    現代音楽であればあるほど、楽譜の中には深く様々な感情や風景や、動きが込められている。金8の名曲小長谷宗一さんの「幻影」シリーズは、都市と文明と人間の疎外がテーマになっている。足踏みをしているのはなぜか?「パラレルワールド」でチューバにミュート付きトランペットを入れて吹く(バラフォニアム)のはなぜか?王様の耳はロバの耳的な「誰にも言えない悪口」かもしれない。もしかしたら大きなものに歪められてしまう1人の声かもしれない。
    そういった現代音楽にしか持ち得ない「雰囲気」にたどり着くために、楽譜を丁寧にさらいながら、音楽を発見していく作業は面白さの1つだ。

    遠回りかもしれないけれど、特に学生のみなさんには、自分の頭を使って、めんどくさい曲を読むという作業ができるようになってほしい。
    3連符、5連符、7連符は、ゆっくり2拍3連にしたり、2+3連にしたり、自分がわかる大きさまで大きくしてから読んでみたらいい。

    そしたら、課題曲も読めるし、自由曲も読める。もっと楽に次の発表の準備ができる。なかなか部活ができない時間も増えているだろうから、LINEのグループ通話で、仲間たちと楽譜を読む会をしてもいいだろうと思う。

    ざくっとYouTubeで聞いて、なんかかっこいい、コメント欄が絶賛の嵐だった、憧れた、前年のコンテストで近くの学校がこの曲で勝ったみたいな適当な感じだけで曲を決めるのはできれば、やめたほうがいい。
    かっこいいという理由だけで、急にトリプルアクセルを飛べるようにはならない。
    アンサンブル曲には、みんなが憧れる目立つ曲以外にも素晴らしい曲はたくさんある。だからこそ、日常的に音楽だけ聴く時間をとるのも大事だ。
    自分は何に感動し、何を感じているのか?まずは自分の中にあるその部分を育てていってほしい。また、曲を決めるときにどれだけのアンサンブル曲を調べ、聞き、アプローチできるか?は学校の顧問やコーチや音楽監督のしごとの1つでもある。良識のある音楽家と出会いもまた必要だ。

    よく言われる言葉で、
    メンバーのうち1人が上手ければ、地区は抜ける
    メンバーのうち2人が上手ければ、都や県は抜ける
    メンバー全員が上手ければ、全国には行ける。

    うまいって、なんだろうね?