芽盛

"こんなときにこんな気持ちになあれ"
卒業するとき、場所を去るとき、ちょっとだけ苦しい。
ちょっとだけ、寂しい。これからのことが怖い。でもほのかに暖かい。
そうやって思い起こされた気持ちが、
冬の空に広がって、
すーっと溶けるように広がって、
深呼吸の音がして、
にぎやかな文カフェの音を聞きながら
ちょっとだけ、顔の表情が動く。

薄ピンクのほおを冬の風は、すーっと抜ける。
そういう気持ち。すごしてきたこと、積み重ねてきたこと。
いえなかったこと。いいたかったこと。二人で見ていたこと。
夜の学校の明かりの強さと馬場歩きの暖かさ。
それを、少し思い出すこと。
そこに、たくさんの人たちがいたこと。
それを紙にすること。思い出をひらいて・とじて・むすぶ。

問題は、「甘さ」でいくか、「渋さ」でいくか。
手書きか、明朝かくらいの違い。
的確なほうを選ぶか、思いをぶつけるか。
スタンスの取り方が難しい。