第45回全日本アンサンブルコンテスト


第45回全日本アンサンブルコンテスト

やまぎん県民ホールは、客席では響きの美しいホールで、すべての音が明瞭に聞こえるホールだった。
一方で、サウンドが大きくなりすぎるとやや飽和してしまうホールであるようにも感じた。
選曲については、王道とアンコン向けに書かれた新曲・委嘱作品に大まかに分かれていた。特にクラ4「オーディションのための6つの小品」は毎年演奏されている中でも特に今年は多かった。金管は小長谷、三澤の金8、木管では田村、松下、片岡ら、気鋭の新曲が多く演奏されていた。午後の部の感想を少しだけ。


【中学校の部】

打楽器のマレットの選択、異なる楽器同士の音色の組み合わせがとても気になった。
音量だけが大きすぎる、とか、しっかり練習を積み重ねたからこその「作業感」のある団体が見受けられ、コンテスト的には減点はしにくいけれども、それ以上の音楽面の表出力(パフォーマンスではなく)や、内面の呼吸が合った演奏になればもっと良かったと思う。

志木市立志木中学校

非常によくコントロールされたアンサンブル。緊張感の持続、間合いのとり方、音色の作り方、奏者同士のコミュニケーションのとりかた。それぞれが自然で、身体の動きの中にも音楽を感じた。強いていえば、全体のダイナミクスレンジにもう少し幅をもたせるとよかったかもしれない。

佐賀市立城南中学校


「へー、この曲こんなにおもしろい曲だったんだ」と思える演奏。奏者たちが、自分の役割をしっかりわかり、他のパートの言っている意味を理解したアンサンブル。世界観も大きく、何より楽しかった。どう育てたら、こういう音楽ができる子どもたちが育つのか?生徒たち自身のキャラクターもよいのだろう。
一部イントネーションが曖昧になってしまうところや、傷がないわけではなかったので、丁寧にまた彼女たちらしく、音楽を楽しんでいってほしい。

【職場・一般の部
】

配置もあるかもしれないが、全体的に木管サウンドがナイーブで、美しい音ではあるが、ステージの外に出てくる音の根本的な響きの弱さを感じる場面が多かった。さらに、非常に内省的な音楽が多く、その人を超えていくチカラが弱く感じた。ある一定上の技術的レベルはもちろん超えているのだが、それ以上に「音楽」を表現するための譜読みにもう少し時間をかけるとよいのかな?とも。
金管については、「うるさい」サウンドと「リッチ」なサウンドは違うというのがよく分かる大会だった。
特に内声パートのバランス感と、力量、tuttiになったときの全体の響きをもう少し客観的に理解して演奏されるとより豊かな曲作りになるように感じた。



・アルペジオ吹奏楽団


昨年からとても気になっていた金管アンサンブル。どのパートも抜けがなく、演奏技術のクオリティが高い。特にチューバのサウンド、表現力。チューバ一本が本来持つ存在感を十分に感じることができた。チューバの表現の可能性は吹奏楽でもなかなか埋もれてしまうものだが、こういった奏者がたくさん増えたらいいのに…と思ってしまった。全体的に欲を言えば、より音楽として「幻影」をどう理解し、共有していくのか?といったコンテストを超えた曲との向き合い方をしてもらえたら、より鋭く、ある種のダークな諧謔性みたいなものも表現されてくるように感じる。



・Ensemble Spinel


各奏者のサウンドがずば抜けて美しく、よく響き、3本の異なった楽器同士の溶け合う響きの心地よさを感じた。 またよくスコアから音楽を読み取り、和声感やフレーズの処理、音楽の流れの自然さもよかった。
いい意味で、ちょっとアマチュアっぽくない仕上がり。もっとエグいSpinelも聞いてみたい。

・東京隆生吹奏楽

(個人的な趣味の話)
正直に言うと、あまり好きなバンドではない。
ただ、本当に上手だった。こんなふうに完璧に吹きこなしてみたい。
基本的なテクニックや、なすべきことの理解が明確で、スタッカートもレガートも美しく、一人ひとりがコンテストにおいてやらねばならないことを、ちゃんと練習して積み重ねた結果としての5分。演奏経験の豊富さからくるものなのか、安定感。特にフリューゲルのsolo。根拠のあるドヤりは説得感がある。彼らがどういう成長をしていくのか、彼らが持っているこんなに素敵なチカラを、もっと色んな人のためにも使ってほしいと願ってしまった。

 

全体の審査結果については文句は1つもない、妥当なものだと感じた。